東南アジアの洋上風力をめぐる物語は、過去10年の大半、メガワット数と、実現に至らなかった政策上の約束によって語られてきました。ベトナムは、その流れを急速に変えつつあります。改定された国家エネルギー計画、英国との画期的な二国間パートナーシップ、そしてすでに確保されている数十億ドル規模の専用ファイナンスにより、英国・ベトナム間の洋上風力投資回廊を実現するための条件が、初めて本当の意味で整いつつあります。英国のデベロッパー、プロジェクトファイナンスのチーム、サプライチェーン企業にとって、行動を起こすべき時期は「いま」です。
PDP8とは何か、なぜ洋上風力の開発にとって重要なのか
PDP8(第8次電力開発計画)は、2050年までのベトナムの発電、再生可能エネルギー目標、インフラ投資を規定する国家マスタープランです。2023年5月に首相決定第500/QĐ-TTg号として初めて承認され、2025年4月に首相決定第768/QĐ-TTg号で大幅に改定されました。この改定により、投資判断の前提は大きく変わっています。
当初のPDP8では、2030年までに洋上風力6,000MWを目標としていました。改定計画では、この目標を上限17,032MWへと引き上げた6,000〜17,032MWのレンジとし、稼働開始時期を2030〜2035年に位置づけています。2050年の目標も、当初の70,000〜91,500MWから、113,503〜139,097MWへと引き上げられました。PDP8は、ベトナムの洋上風力の技術的ポテンシャルを約600GWと見込んでおり、世界でも有数の未開発資源です。その背景には、3,000kmを超える海岸線、安定した洋上の風速、そして大規模な洋上風力の基礎の設置コストを抑える、比較的浅い近海の水深があります。
改定PDP8は、洋上風力の実現に必要なインフラ面の制約にも踏み込んでいます。2035年の目標を達成するには、大型の洋上風力部材に対応できる港湾設備、専用の設置船、送電網の増強、そしてタービン、基礎構造、海底ケーブルを大規模に製造できる国内サプライチェーンへの大規模な投資が必要です。このサプライチェーンのギャップは、それ自体が大きな商機であり、特に英国のエンジニアリング企業や新エネルギー関連サービス企業にとって魅力的です。
英国・ベトナム洋上風力の戦略的パートナーシップ
この投資回廊を支える二国間関係は、2025年10月29日に正式化されました。ベトナム共産党のトー・ラム書記長と英国のキア・スターマー首相がロンドンで共同宣言に署名し、両国関係を包括的戦略パートナーシップ(CSP)へと格上げしたのです。洋上風力の開発は、その重要な柱の一つです。
CSPのもとで、両国政府は「ベトナム・英国クリーンエネルギー・パートナーシップ」を設立することで合意しました。低炭素経済への移行の加速、公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)の枠組みに基づくプロジェクトの支援、そして英国企業がベトナムの洋上風力発電とクリーンエネルギー・インフラに投資するための具体的な機会の創出が、その明確な目標です。このパートナーシップは、石炭の段階的な廃止も支援しています。これは戦略的な優先課題であり、系統の安定性を維持するために必要な再生可能エネルギーの拡大のペースを、さらに引き上げるものです。
関係の格上げは、水面下で着実に積み上げられてきた動きを公式化するものでもありました。すなわち、英国の各機関が、ベトナムの洋上風力開発とより広範な新エネルギーへの移行の中心に、英国の産業を位置づけようと進めてきた組織的な取り組みです。
英国・ベトナム洋上風力アクセラレーター・パートナーシップ
二国間の取り組みの中で、実務面で最も重要なものの一つが、英国・ベトナム洋上風力アクセラレーター・パートナーシップです。ベトナム商工省と在ハノイ英国大使館が、世界風力エネルギー会議(GWEC)のアジア太平洋風力エネルギーサミットにおいて共同で立ち上げました。英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)とオーシャン・エナジー・パスウェイが資金を提供し、カーボン・トラスト(Carbon Trust)が技術面の主導パートナーを務めており、両国の政府機関、業界関係者、技術パートナーを結びつけています。
その使命は、次の3つの分野にわたります。ベトナムの洋上風力開発に関する政策枠組みの強化、初期段階の風力プロジェクトの資金調達適格性の向上、そして洋上風力の系統統合計画の支援です。ベトナム市場に関心を持つ英国のデベロッパーにとって、このプログラムは、関係構築のチャネルであると同時に、英国政府が単に外交上の支持を表明するにとどまらず、市場を商業的に成立させるための実質的なリソースを投じていることを示すシグナルでもあります。
UKEFとJETP:回廊を支える資金の層
英国・ベトナムの洋上風力の機会が具体性を帯びるのは、ファイナンスの側面においてです。特に注目すべきメカニズムが2つあります。
英国輸出金融(UKEF)は、ベトナム財務省との覚書(2025年10月)を通じて、ベトナム向けに65億米ドル(少なくとも50億ポンド)の与信枠を確保しています。優先分野には、洋上風力発電所の開発、スマートグリッド、カーボンニュートラル港湾が含まれます。UKEFは、ベトナムのエネルギー分野のプロジェクトスポンサーやオフテイカーに対して、自らの金融商品を積極的に紹介しており、ペトロベトナム(PetroVietnam)およびPTSCに対しては、ベトナム初の大規模洋上風力プロジェクトに向けた関心表明書も発行しています。この与信枠は、ベトナムの洋上風力プロジェクトへの英国サプライチェーンの参画を、資金面で大幅に実現しやすくしています。
UKEFと並んで、英国が創設メンバーとして国際パートナーグループ(IPG)に参加するJETPは、ベトナムのエネルギー転換に向けて155億米ドルの資金パッケージを動員しています。IPGは、洋上風力を含む11件のJETP候補プロジェクトを特定しており(2025年9月時点)、JETPの資金は、初期の洋上風力発電所プロジェクトが、より早くファイナンシャル・クローズに到達することを後押しすると期待されます。UKEFとJETPを合わせた資金の層は、これまで国際資本にとって最大の障壁であったベトナムの初期段階の洋上風力投資のリスクプロファイルを、実質的に低下させます。

2026年のベトナム洋上風力の投資環境
2026年半ば時点で、ベトナムには約43件の洋上風力プロジェクトが、さまざまな開発段階にあるとされ、アジア太平洋地域で最も活発な洋上風力開発パイプラインの一つとなっています。2025年3月に施行された政令第58/2025/NĐ-CP号により進展が加速しました。同政令は、再生可能エネルギーと新エネルギーの両方のプロジェクト区分を対象に、洋上風力発電所の許認可、海域の割当て、デベロッパーの選定に関する詳細な法的枠組みを定めています。さらに2026年7月4日には、洋上風力の調査事業者の要件、投資方針の承認手続き、2025〜2030年と2031〜2035年に稼働するプロジェクトの申請処理の仕組みなどを具体化した政令第272/2026/NĐ-CP号(2030年末まで有効)が施行されています。
初期の兆候は明るいものです。2026年初めには、ペトロベトナムとEVNに対して、洋上風力の調査海域が割り当てられました。米国のPacifico Energyは、ホーチミン市沖(旧バリア・ブンタウ省沖)の500MWの洋上風力プロジェクトについて、農業環境省から海域調査の許可を取得し、2026年4月に発表しました。外国のデベロッパーとしては最初期の許可の一つとされ、国内で最も洋上風力の開発が活発な海域の一つです。コペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズ、メインストリーム・リニューアブル・パワー、PNE AGといったグローバルなデベロッパーもすでに活動しているとされており、調査段階に進む風力発電所が一つ増えるたびに、市場の信頼感が高まり、規制の枠組みが機能していることが示されます。
ベトナム政府は同時に、国内のタービン・部品産業への投資も進めています。改定PDP8は、2030年までに再生可能エネルギー関連の産業・サービスの地域間拠点を2カ所整備する方針を示しており、タービン、タワー、基礎構造の国内製造を後押しする産業戦略とみられます。この産業戦略は、英国のタービンメーカーや部品サプライヤーとの技術移転パートナーシップにとって、さらなる機会を生み出します。
買取価格、出資規制、投資家が知っておくべきこと
ベトナム商工省は、洋上風力発電について、地域別の上限価格の枠組みを公表しています(2025年)。水準は1kWh当たり3,078〜3,975ドン(約0.12〜0.15米ドル)で、立地とプロジェクトの種類によって異なります。これらの価格は上限であり、その範囲内で売電価格を交渉することになります。この価格設定は、ベトナムの低いコスト基盤と、経済全体の成長軌道とあいまって、適切に構築された洋上風力発電所への投資に対して、信頼に足るリターンの枠組みを提供します。
出資規制については、外国投資家は洋上風力プロジェクトに最大95%まで出資できます(政令第58/2025/NĐ-CP号。草案段階の上限は65%でした)。ただし、国営または国が支配する企業との合弁が必要で、国内企業が事業実施主体の資本金または議決権株式の5%以上を保有することが求められます。外国投資家には、少なくとも1件の洋上風力プロジェクトの実施経験(またはその管理・設計・施工への参画経験)が求められます。財務面では、政令第272/2026/NĐ-CP号が、投資方針の承認申請にあたり、総投資額の20%以上の自己資本と、残りの資金に対する金融機関の融資コミットメントを求めるとともに、外国投資家には15%以上の出資比率を求めています。これらの要件は、技術的な信頼性を確保しつつ、戦略的インフラ資産へのベトナム国家の関与を維持することを狙ったものです。
英国企業はどのようにベトナムの洋上風力市場に参入するか
英国企業の参入経路は事業の種類によって異なりますが、洋上風力開発のバリューチェーン全体に共通する基本があります。
デベロッパーは、ベトナムの投資家選定の枠組みに、早期に関与すべきです。国が100%出資する国営企業が主導するプロジェクトについては、首相が投資方針と投資家を同時に承認でき、競争入札を経ないルートも用意されています(政令第58/2025/NĐ-CP号)。実際、UKEFはペトロベトナムとPTSCに対し、ベトナム初の大規模洋上風力プロジェクトに向けた関心表明書を発行しています。商工省の次官は2026年6月、複数のプロジェクトに調査許可をすでに付与しており、今後6カ月以内に投資家を選定する見通しを示しました。したがって、正式な配分の段階が始まる前に国営企業パートナーとの関係を築くことが不可欠であり、政令第58/2025号と政令第272/2026号の枠組みを最初から理解しておくことが、許認可の迅速化につながります。
サプライチェーン企業とエンジニアリング企業は、おそらく最もアクセスしやすい参入口を持っています。ベトナムは、港湾インフラ、設置船の能力、タービン製造、海底ケーブルの専門性にギャップがあることを認めており、いずれも英国企業が深い競争優位性を持つ分野です。2025年10月に、洋上風力、グリーン水素、エネルギー貯蔵の各分野の英国企業17社をベトナムに派遣した英国の貿易ミッションは、明確な商業的意欲と初期の手応えを示しました。
金融機関とプロジェクトファイナンスのアドバイザーは、UKEFとJETPの枠組みを活用して、改定PDP8のもとで生まれつつある洋上風力発電所プロジェクトのパイプラインへの投資を構築できます。東南アジアを対象とする運用を担う機関にとって、ベトナムの洋上風力開発の軌道は、この地域でも有数の魅力的なリスク・リターン特性を備えています。
リスクと規制上の検討事項
リスクを冷静に見つめることなく、ベトナムの洋上風力戦略は成り立ちません。最も重大なのはスケジュールです。改定PDP8は、当初の6,000MWの目標時期を5年後ろ倒しにしました。政令第58/2025号のもとで規制の枠組みは改善しつつあるものの、許認可のスケジュールは依然として長引く可能性があります。大規模洋上風力発電所の系統接続計画はまだ初期段階にあり、複数の風力プロジェクトを同時並行で対象とする、大規模な競争的投資家選定の仕組みは、十分に検証されていません。
為替リスクとオフテイクリスクも、特に国際的なプロジェクトファイナンスを求める洋上風力開発プロジェクトについては、慎重なストラクチャリングが必要です。世界銀行が2025年7月に公表したベトナムの洋上風力発電に関する報告書は、長期の収益の確実性を提供するために、より強力な電力購入契約(PPA)の枠組みと、より明確な系統アクセス権が必要であることを指摘したとされています。
とはいえ、規制の方向性は明らかに前向きです。当初のPDP8から政令第58号、そして最大17GWに引き上げられた改定目標に至る、2023年以降の改革のペースは、政府が洋上風力開発を単に計画書の上で描くのではなく、実現させようと本気で取り組んでいることを示しています。
英国企業がいま取るべき行動
英国・ベトナムの洋上風力投資回廊は、もはや将来の見込みではなく、政府のコミットメント、専用のファイナンス・メカニズム、そして加速する再生可能エネルギー政策の枠組みに支えられた、実際に進展しつつある商業的な現実です。ベトナムの洋上風力開発の野心は、英国・ベトナム・クリーンエネルギー・パートナーシップ、そしてUKEFの65億米ドルの与信枠とあいまって、英国企業に対し、東南アジアで最も重要なインフラ成長市場の一つへの、政府の後ろ盾を得た道筋を提供しています。
英国企業にとって、戦略上の要諦は早期に動くことです。今日、ベトナム市場で関係を築いているデベロッパー、タービンサプライヤー、エンジニアリング企業、金融機関は、競争的な配分ラウンドが始まり、最大17GWの洋上風力パイプラインが契約済みの容量へと転換され始めたとき、そしてその後に続く大きな経済成長の機会において、最も有利な立場に立つでしょう。
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