長い海岸線と豊富な天然資源を擁するベトナムの海は、大きな発展の可能性を秘めています。ベトナムは古くから戦略的な思考とビジョンを持ち、同国を海洋強国へと変えるべく、海洋経済の発展計画を推進することを決意しています。
ベトナムの海洋経済発展の条件
ベトナムでは、海洋および沿岸の省・市の経済が国の国内総生産(GDP)の約47~48%を占めており、そのうち海洋経済のみのGDPはすでに約20~22%に達しています。ベトナムの主要な海洋経済セクターには、海洋再生可能エネルギー、石油・ガス、水産物、観光、海運、環境、生物多様性、生態系サービスなどが含まれます。ベトナムは海洋経済の発展に必要な豊富な資源とその他の有利な条件に恵まれているため、この数字はそれほど驚くべきものではありません。
地理的特徴
沿岸国であるベトナムは、3,260kmを超える海岸線、主権・主権的権利および管轄権が及ぶ100万km2超の海域、そして3,000以上の島嶼・諸島を有しています。同国の人口の50%以上が、都市化率の高い28の沿岸省・市に居住しており、これがベトナムの海洋経済を発展させるために必要な前向きな推進力となっています。その結果、サービス産業、とりわけ輸出入サービス、観光、石油・ガス関連サービス、輸送などの高付加価値産業の多様化が進みました。
ベトナムには114の河口、中部沿岸に沿った約52の水深の深い湾(入り江、湾、潟湖が海岸線の60%を占めます)、そして大型港湾を建設できる100以上の地点があります。ベトナムの海は経済発展の著しい地域に位置し、世界の多くの経済大国・政治大国をつなぐ架け橋となっています。これは、ベトナムが海運業、造船業、ロジスティクスを発展させる上で有利な条件となっています。また、交通の便が良く、閉鎖型の湾や水深の深い湾に恵まれていることから、多くの経済区の開発にも有利な条件を備えています。
多様な資源
調査によると、ベトナムの海域では石油、金属、建設資材、宝石・半貴石、液体鉱物など、35種類の異なる鉱物が確認されています。さらに、ベトナムは海洋資源の潜在性が非常に大きく、燃える氷(メタンハイドレート)、潮汐エネルギー、波力エネルギー、原子力、重水など、多様な海洋エネルギーを有しています。
ベトナムの海域には豊富な水産資源があります。2,000種を超える海産魚が確認されており、そのうち約100種が経済的価値を持っています。年間の漁獲量は約230万トンと推定されています。養殖業もベトナムの海洋経済の強みであり、数千万人に上る沿岸住民に大きな利益をもたらすと同時に、海洋経済の発展に大きな可能性を提供しています。

(出典:Huy Thoai/iStock)
ベトナムの海洋経済において最も重要な資源は依然として石油・ガスであり、推定埋蔵量は30億~45億m3で、その大半はガス(50%超)で、大陸棚に集中しています。確認された石油・ガス資源の埋蔵量は約13億6,500万m3で、ベトナムの現在の石油・ガス埋蔵量と予測潜在量の合計の30~35%を占め、天然ガスがその半分以上を占めています。
ベトナム海洋経済発展の今後の計画
ベトナムの現在の海洋経済開発戦略がもたらす価値は否定できません。しかし、それに伴い、過熱の兆候や非効率・持続不可能な開発など、多くの問題も生じています。ベトナムは海洋国家ではありますが、現時点ではまだ海洋強国とは言えません。
問題の緊急性を認識し、ベトナム政府は同国の海洋経済発展に向けた今後の計画を明確に示しています。「持続可能な開発」と「ブルーエコノミー」は、ベトナムの長期戦略におけるキーワードとなっています。持続可能なブルーオーシャン経済は、統合的な管理を通じて海洋の経済的可能性を最大限に引き出し、将来世代のために海洋資源を保護・保全することにかかっています。気候変動への適応には、効果的なリーダーシップと、すべてのステークホルダーが関与する統合的な取り組みが必要です。
2020年、政府は、2030年までのベトナム海洋経済の持続可能な発展に関する戦略(2045年までのビジョン)について、第12回党大会における党中央委員会第8回総会の「決議第36-NQ/TW号」を実施するための5か年計画を公布する「決議第26/NQ-CP号」を発行しました。
全体目標は、「ベトナムを海洋強国とし、海洋経済の持続可能な開発の基準を満たし、海洋生態文化を形成し、気候変動と海面上昇に積極的に適応し、汚染、海洋環境の劣化、海岸侵食、海食の傾向を反転させ、重要な海洋生態系を回復・保全することです。新たで先進的かつ現代的な科学の成果が、海洋経済の持続可能な開発を促進する直接的な要素となります」というものです。
優先的に開発されるのは観光と海洋サービスであり、次いで海洋経済、石油・ガスの採掘およびその他の海洋鉱物資源、養殖・漁業、沿岸産業、再生可能エネルギー、新たな海洋経済セクターが続きます。 資源を大量に消費する経済セクターが、観光や海運のように天然資源をより効率的に活用する産業に後れを取っていることがわかります。
2021年、ベトナム首相は、2030年までのベトナム海洋経済の持続可能な発展に関する戦略(2045年までのビジョン)の実施を刷新・強化することに関する「指令第31/CT-TTg号」を発行しました。同指令によると、ベトナム政府および関連機関は協力して情報技術の活用を強化し、海洋経済セクターのデジタル変革を迅速に実施する必要があります。
沿岸地域は、自立の精神(内部の力の活用)を促すと同時に、開発のために「外部の力」を活用する必要があります。また、海洋経済のセクター・分野、特に決議第36-NQ/TW号で特定された6つの海洋経済セクターに投資する大規模経済グループの形成と発展を奨励する必要があります。これらは、社会経済発展の原動力となる可能性、優位性、余地を備えた重点経済セクターです。
2022年5月、ハノイで開催された持続可能な海洋経済と気候変動適応に関する国際会議において、レ・ミン・ガン(Le Minh Ngan)天然資源環境次官は、ベトナム政府による以下の5つのコミットメントを改めて表明しました。
- 持続可能で気候変動に強靭な海洋経済を促進する国際的な規制・政策環境を整備すること。
- 気候変動、海面上昇、プラスチック廃棄物がもたらす多面的な影響について、国連が管理する包括的なデータベースシステムを構築し、世界的な対応策の策定を支援すること。
- 経済的、社会的、心理的、ジェンダーなどの要因を考慮した、実践的かつ効果的な地域・世界の安全保障協力の仕組みを促進・構築することにより、気候に関連する安全保障上の課題とリスクに対処すること。
- 新型コロナウイルス感染症後の持続可能な海洋経済開発の回復力、ならびに脆弱な国々、コミュニティ、ステークホルダーの適応能力を強化し、海洋輸送、養殖・漁業、海洋・沿岸観光、再生可能エネルギーなどの経済セクターを構築・発展させること。
- 海洋技術の研究、開発、移転への投資を奨励し、新たなブルーオーシャンの再生可能エネルギー源への移行を進めるとともに、持続可能な海洋資源利用の管理を監視し、意識啓発と、持続可能な海洋経済に関する意思決定・政策への幅広いステークホルダーの参加を促すこと。